ハマタイセイ(エゾタイセイ)

ハマタイセイ(エゾタイセイ)で染める

アイヌの藍染」では、アイヌの人々がハマタイセイを藍染に利用していたと仮定した場合の必要条件を示し、それらを満たす物証となるものがなんら存在しないことから、アイヌの人々がハマタイセイを藍染に利用していた可能性は極めて低いことを示しました。
そもそも、ハマタイセイに藍色素の存在を知り得たこと自体が疑問に思われます。タデアイのように切り口が青くならないし、指ですり潰しても青く見えないのです。ただし、薬草として葉を大量にすり潰したとしたら藍を見出すことが出来たかも知れません。もしくは、漢方薬にタイセイ属の根茎を利用する板根藍(ばんこんらん)があることから、交易によって知識を得た可能性もあります。

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さて、そもそも実際のハマタイセイの色はどのようなものなのか。いくつかの条件下で染めてみました。

 

****************** ハマタイセイの藍染 ******************

染色に使用したハマタイセイは当工房で栽培したもの(1985年礼文島において秋田良子氏が採取した種子を継続栽培)を使用した。
2年草のハマタイセイは、1年目にロゼット葉を形成して根茎に栄養を蓄えてから、翌年、開花・結実する。染色には2年目の開花前の葉を使用した。

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ロゼット葉

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2年目の葉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

染色法は、絹糸と羊毛は生葉染め、綿糸は発酵建てで染めるべきであるが、ハマタイセイ1株から採取できる葉が数十gに過ぎないために発酵を安定させるだけの分量の確保が出来ず、ハイドロ建てにした。
手始めに被染物に対して200%のハマタイセイの葉(タデアイの生葉染めでの標準量)の生葉染めで絹糸に染めて見たが、ほんのり青くなった程度であったので、更に200%追加、延べ400%で染めた。

 

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絹糸に対して200%量のハマタイセイの葉を生葉染めにした結果では、辛うじて青く見える。

 

次に羊毛の生葉染めでは、葉の分量を400%で染めたが、絹糸で染めた色には遠く及ばない濃度であったので、更に400%を追加し、また更に400%追加、延べ1200%にして絹糸の色濃度に近付けた。

次の綿糸では、最初から1000%の葉量をハイドロ建てにしてから数回染め重ねて色を合わせた。

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ハマタイセイで染色 左から綿糸・絹糸・羊毛糸

 
 

タデアイで染色した羊毛

タデアイで染めた羊毛糸と比べると、藍色素がいかに少ないかが分かる。同色に必要なハマタイセイの推定葉量は2400%、実にタデアイの10倍以上にもなる。

 

 

 

 

 

 

 

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以上、栽培条件の違いや計量の誤差を考慮に入れても、タデアイと比べてハマタイセイに含有する藍色素が如何に微量であるかが分かります。
ところで、ハマタイセイに染着した青色色素が藍色素なのか、それとも別の色素なのかですが、綿糸の染色において強アルカリの還元溶液下で染着・発色していることから建染め染料、即ちインディゴ(藍色素)と見て良いと思われます。

最後に、webで「ハマタイセイ」を検索すると、アイヌがハマタイセイを藍染に利用したと記述するサイトがいくつか見られます。それらのサイトでは、アイヌが何に(繊維)どのようにして(技法)染めたのかは示されず、また、出典も示されておりません。当然、ハマタイセイで染めた記録もありません。根拠がないのです。
当工房で30年近く絶やさずに育てたハマタイセイの種を、ようやく役立てることができたのです。

2016.12.7

 

 

 

 

 

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