羊毛の洗い方

【原毛の洗い方】

 

刈り取った原毛はなるべく早く洗いましょう。時間の経過とともに汚れが定着するばかりでなく、原毛に含まれる微生物や大量の油脂が酸敗(変質)するなどによる影響で羊毛の風合いを台無しにしてしまうからです。酸敗してしまった油脂は除去が困難になります。
保管する場合は、空気を通す容器(段ボール等)に入れて乾燥した冷暗所に置くようにします。(個人的には冷凍保存したいくらいですが!)

 

!洗浄の前に

・予めゴミや糞などの付いた汚れた部位を取り除いておきます。
原毛は部位によって汚れの程度が異なり、また、水を含むとかなりの重量になりますので、小分けにしてネット袋等に入れて洗います。

紡ぎ用と染色用では、洗い方を変えます。
紡ぎ用では、油脂分を残します。(湯洗い → 洗剤洗い)
染色用では、油脂分を出来るだけ除去します。(洗剤洗い → 再度洗剤洗い)

フェルト化を防ぐために、熱い状態ではなるべく動かさないようにします。容器は保温性のあるものが良いのですが、何でもかまいません。全自動洗濯機を使えると良いのですが・・・。

 

 

 

〇 湯洗い(洗剤洗いの場合は、5~10%の中性洗剤を入れる)

60℃の湯(原毛の20~30倍量)に原毛を浸し、落し蓋のようなもの(漬物用)で全体をゆっくりと押し下げます。少量であれば手のひらで押し下げます。時間を置いて数回押し下げ、出来れば一昼夜保温します。保温するか、しないかでは毛先の糞尿汚れの落ち具合が格段に違います。

熱い場合は放冷してから網目コンテナ(ざる)等にあけてしばらく水を切り、脱水機に入れて約30秒間回します。

原毛の洗浄に適した中性洗剤は、モノゲン(1935年、第一工業製薬が製造した日本初の合成洗剤)・原毛洗浄剤L(ウールグリースの乳化力に優れ、フェルト化しにくい。田中直染料店より)がお勧めですが、中性であれば何でも構いません。

 

 

 

 

 

 

 

 

☆ 再度洗剤洗い

以下、洗剤洗いと同じ。
洗剤量は原毛の油脂量や用途(染色・紡ぎ・フェルト等)によって加減します。

※低温で洗浄した原毛は泥汚れは落ちていますが脱脂が不足しており、紡ぐのには問題なくとも染色には向きません。高温で洗浄することにより洗剤の効力も上がります。

 

 

◇ すすぎ洗い

原毛の100倍量の湯(人肌)を貯めて、原毛全体をゆっくり押し下げ、コンテナ(ざる)等にあけてしばらく水を切り、脱水機に入れて約30秒間回します。再度繰り返して洗いは終了。すすぎの水はケチらずに。
毛先の汚れは指先で揉んでやれば感動的にきれいになります。

 

 

△ 乾燥

洗い終えた原毛は日陰の風通しのよい所で底が網状の干し台に広げて置きます。

※染色する場合は、乾燥させないで染めた方がフェルト化・斑を緩和することができます。ただし、厳密な計量ができません。

 

 

 

□ 最後に

原毛の洗浄の善し悪しはその後のカード作業に大きく関わりますので、出来れば時間と手間を惜しまずにやっていただきたいものです。
また、品種や飼育方法によって原毛の状態は大きく異なりますので、羊一頭一頭の毛質や汚れ・傷み具合に合わせた洗浄方法を見つけることが大切です。

 

 

羊まるごと研究所