明治開拓時代、十勝において、徳島からの入植者による藍作が試みられましたが、6月の遅霜と9月の早霜の度重なる冷害に見舞われました。藍の種は常温で1年しか発芽能力がないため、十勝の藍作は早々に挫折してしまいました。
いつの日か 藍の華咲く 夢を見て
十勝で藍を作る
5月中旬、不織布などでトンネルにした苗床に種をばら撒きにする。本葉が出てきたら約1cm間隔に間引く。発芽直後の子葉は虫の食害を受けやすいので、予防に薬剤を散布する。
※藍の判別は子葉の大きさと形で判別できる。上からタデアイ、タニソバ、イヌタデ
本葉の3枚目が見えてきた頃に、更に間引いて約2cm間隔にする。
細かくした土をふるって、子葉の高さまで 覆土する。
6月は最高気温が10℃を下回る日もあるので、不織布は日中もかけて置く。
6月中旬、 苗が15cm~20cmになったら本畑に移植する。
水をたっぷり与えてから5~6本束にして引き抜いて、本畑に株間45cm畝巾75cmで浅めに植える。肥料は予め多めに入れておく。 雨の前日 が良い。
移植は気温が高くなった時期を見計らってから行う。
活着して成長が旺盛になってきたら、根元に少量の肥料をふって覆土する。
藍は乾燥に弱いので水不足に注意する。
7月下旬~8月上旬、花穂が見えてきたら晴天の日の午前中に茎を10cm程残して刈り取る。
出来れば晴天が3日間続けば藍濃度が高くなるので良い。
一番咲きの株は刈り取らずに採種用にする。
※この時期は生葉染に最適である。
刈り取った藍葉は、直ちに葉を分離して天日干しにする。
生乾きにすると藍色素は消失する。
刈り取った後の株には、根元に肥料をふって覆土する。
土の乾燥が続くと肥料の濃度障害が起きるので、適宜水やりを行う。
※採種用の株とイヌタデの仲間が交雑する場合があるので、周辺にあるイヌタデは取り除く。
刈り取りから約1ヶ月で再び花穂が出てくるので、2番刈りをする。
覆土するが追肥はしなくてよい。
9月に入って気温が20℃を下回る日が出てくると、藍の成長と色素含有量は急速に減少する。
採種用の株には、花蕾を冒すウイルス病の予防に薬剤を定期散布する。
9月下旬、早霜に備えて採種用の株に不織布をかけて置く。
10月中旬、朝の気温が氷点下を下回った時点で、5ヶ月間の藍作りは終了する。
工房の藍植物
タデアイ(白花)
北海道伊達市、篠原家由来の小上粉と思われる品種。1989年工房開設以来、栽培を継続している。主産地徳島では9月に開花するが、北海道の環境下で8月に開花する形質に移行したようである。因みに、小上粉白花種は昭和初期に発見された晩生多収量型の最優良品種である。
タデアイ(赤花)
小上粉赤花と思われる品種を試作したところ、開花が9月で結実前に凍害により全滅した。ところが翌年、1個体だけ自然発芽しているのが見つかり、以降栽培を継続している。開花は翌年から8月になった。
ハマタイセイ
北海道の海岸に自生するアブラナ科の含藍植物で、ヨーロッパのウォード(ホソバタイセイ)の近縁種。アイヌ民族が藍染めに使用したとも言われるが、その可能性は極めて低い。藍色素は微量であり、現在、環境省RDBレッド データ ブック(日本の絶滅のおそれのある野生生物)において、 絶滅危惧種に指定されている。